手描き風CGパース

●手描きの建築パース

以前は製図版に平面図を貼り付けて、二点透視図法で作成した下図をキャンソンボードにトレースダ
ウンし、筆とガッシュ(ポスターカラー)で建築パースと内装パースを作成していました。途中から
下図のみCADソフトで作成するようになりましたが、仕上げは筆で行っていました。
ガッシュは耐水性ではなく乾くと粉を固めた感じになるので、絵具を塗った上に目地をなどの細い線
を入れる場合はインクが染み出してしまうのでペンなどは使えません。そのため細い線も全て筆で描
く訳です。小学校の時に使った事もあると思いますが、溝がついた竹の定規を覚えている人も多いと
かと思います。今では竹の定規を使う人もあまり居ないと思いますが、あの定規の溝は溝引き定規と
言って棒の先に玉が付いた棒を溝に沿わせて線を引く為の溝なのです。箸を持つ様に筆と玉付棒を持
ち定規に沿わせて線を引く訳です。筆しか無かった江戸時代やもっと昔の絵や図面に細い線が書かれ
ているのを見て不思議に思った人もきっと居た事でしょう!?昔の人の知恵は凄いですね!
目地を入れる時の注意点ですがパースに目地を入れると絵全体が暗めになるので、ベースのタイル色
を明るく塗っておく事が重要です。
線引きする場合線のスタート位置と筆を止める位置に絵具が溜まり太く成りがちなので、目地を入れ
る始点と終点部分にマスキングをしておくと良いでしょう。スタート地点の手前から線を引き終点を
通り過ぎる感じです。
CGでは考えられない苦労でしたが、暖か味や躍動感では手描きパースは文句ないです。しかしアン
グルの変更がほぼ不可能、大きな色の変更や修正も難しいうえ時間がかかる。マキャベリというイタ
リアの政治思想家は「長所は必ず短所を伴う」と言ったらしいのですが、CG全盛の今では手描きパ
ースは短所が大き過ぎると思います。

外観パースに筆で目地を入れる1
外観パースに筆で目地を入れる1
外観パースに筆で目地を入れる2
外観パースに筆で目地を入れる2

●リアルCGパース

個性の時代と言われて久し気がしますが、最近のCGパースは何処もかしこも個性が感じられません
写真の様なリアルなパースを見ても感動したり驚く人はもはや居ないと思います。CGが世に出た頃
は皆ビックリしたり目が釘付けになっていましたが、CGが当たり前になった今では誰の心も動かな
い事でしょう。特に日本人の目は厳しい!街中の何処にでもある建物の写真を見せられた人にどう思
うって聞いたとします。聞かれた方は何が?って聞き返すかもしれません。
この建物が素晴らしデザインだったり周りが緑豊かな美しい環境の写真だったら注目してくれるかも
しれませんけど。
現実的過ぎるのは如何なものでしょう?因みに夢の国ディズニーランドに新アトラクションを建設す
る時に提出されるパースは手描きパースが決まりだそうです。想像させて夢を見させるのもサービス
のうちなのかもしれません。

外観パース 信用金庫
写真の添景画像を使用した外観パース

●手描き風CG建築パース

リアルCGパース同様アングル、素材、色の変更が容易に変更できますし、作成時間も手描きパース
ほどかかりません。筆で描いていた頃、パースの良し悪しは添景で決まると言われていました。
手描きパースの世界では何処の描き手も建物はリアルで描いていましたが、樹木、人物、空などの添
景はリアルではありませんでした。それは逆にリアルな建物に手描きの添景を入れる事で主役の建物
が引き立つ効果が生まれたのです。主役を取り巻く脇役までリアルでは主役が目立たないのは映画や
演劇と同じです。
試行錯誤してリアルCGの建物に2DCGの手描きの添景を合わせると、筆で描いた手描きパースの
絵に見える事を発見しました。特徴あるアナログとデジタルの利点を活かしたCGパースの融合を実
現させました。
ジャパネット高田の高田社長は「人は特徴を求めている」と言っています。また建築家の安藤忠雄氏
曰く「手を掛けたモノにしか人は感動しない」とも言っています。他人が作った大量生産の人物写真
空写真、樹木写真などの添景画像を貼り付けたパースでは当然特徴はなく、観た人はあっという間に
スルーする事でしょう。パースは図面ではなく観た人の脳裏に焼き付ける為の画像なのです。

当店は人物、樹木、空、自動車など全ての添景画像をオリジナルで作成しています。

代官山教会 外観パース
3DCGで作った建物や車と手描き2DCGで描いた人物と樹木と空
自動車なしで写真の添景を入れた外観パース
自動車なしで写真の添景を入れた外観パース
自動車ありで手描きの添景を入れた外観パース
自動車ありで手描きの添景を入れた外観パース

●手描き風CG室内パース
外観パースであれば光源は太陽光一つなので一方向からしか光が当たりません。誰でもご存じの通り
太陽は遠いので太陽から降り注ぐ光にはパースペクティブは付きません。全ての影は一方向にしか落
ちません。また太陽光は同じ照度で光が満遍なく当たります。
これに対して室内の照明は大抵の場合光源が複数になります。光源は太陽光と違い極端に近いため一
つの照明器具から当たった光の影は一方向ではなく光源を中心に全方向に影が落ちます。ここまでは
CGソフトが自動で計算してくれるので考える必要はありません。問題は室内パースに配置する人物
画像です。人物画像は3DCGモデルのレンダリング完了後に入れる訳ですが、人物の切抜き画像を
配置すれば済む訳ではありません。先ほど書いた様に人物にも四方八方から光が当たります。人物も
パースに合わせて光を当てなければなりません。人物一人ひとりに合わせた陰影を後から付け加える
事になります。これを実写の人物写真で行うのはかなり難しいです。後から手描きで入れた陰影が浮
いてしまいます。これに対して手描きの人物画像は同じタッチで陰影を描き加えるので違和感はあり
ません。
以上と同じ理由で室内パースに入れる観葉植物も手描きの画像素材を配置した方が自然に見えます。

パースを三次元図面と考えれば人物なしでも良いのかもしれません。しかしパースは誰かにアピール
する絵なので活気が必要だと思います。人物を入れないと硬い感じのする室内パースも手描き人物画
像を配置する事で動きのある絵になると思います。